エリアごとの整備計画



三四郎池には、大学の人々の憩いの場としての視点から、休憩場所や散策場所としての利用を促すような整備がされるべきエリアが存在する。また同時に、そうした利用の場を形成している自然環境を保全する視点から、樹林内への人の侵入を防ぐような整備も検討されるべきである。

以下では、三四郎池の中で整備上重要と考えられる4つのエリアについて、具体的な将来像としての整備計画を提案する。「御殿下側エントランス」は、短時間の滞在でリフレッシュをすることができるエリアとする。「図書館側エントランス」および「あづまやエリア」は、読書などの長時間の休憩をすることができるエリアとする。「弓道場わきエリア」は、散策しながら自然環境の観察ができるエリアとする。

   

御殿下側エントランス(利用調査の A エリア)

本エリアは、三四郎池にいくつかあるエントランスの中でも、最も印象的なものである。木々に覆われた入り口から道が下り、奥に池面がのぞく様子は、通りがかりの人々に「少し立ち寄ってみようかな」と思わせる景色を形成している。エントランス周辺は人の往来が多いが、池までの道のりが長く確保されており、池のほとりでは、都心とは思えない静寂を感じることができる。利用調査の結果からも、「眺めがよく」「ひっそりとしており」「ついでに立ち寄れる」ために、気に入っている人々が多いエリアのひとつとなっていることが明らかになった。

以上のような特徴から、本エリアには、短時間の滞在でのリフレッシュという利用が期待される。池のほとりでは石組みが水中へ向かってゆるやかな段差を形成しており、このエリアで唯一の滞在場所となっている。しかし、不規則に小規模な石が並ぶ石組み、植物の繁茂、排水口のつまり等の影響により、必ずしも一時滞在場所として適切な空間構成になっていない。

そこで、池のほとり部分について、より座りやすい十分な空間を確保するために、現在よりも大型 (1~2m程度 ) かつ平坦な石による石組みへと変更を行う。あわせて滞在の障害となる要素を排除するために、周辺の植栽(ササ・キショウブ・ハゼなど)の伐採を行い、排水口は落葉除去等のメンテナンスが容易なスクリーン型へと変更する。

   

図書館側エントランス(利用調査の H エリア)

本エリアは、三四郎池にいくつかあるエントランスの中でも傾斜度が高く、巨木が多いエリアである。御殿下側エントランス同様、周辺には人の往来が多いが、斜面と巨木によって囲まれた構造になっているために、内部は周辺とは異なる静寂の空間を構成している。しかし利用調査の結果、このエリアを気に入っている場所として挙げた人は 2% のみであり、最も利用しない場所として挙げた人は 9% であった。

本エリアは周辺と隔絶された森の中での休憩を楽しめる空間としての可能性を持ちつつも、実際には十分にその可能性が活かされていない。エントランスから池際に降りる道は傾斜が急で、足場も悪いため、三四郎池の内部へ足を踏み入れがたい。また、立ち寄った際に休憩できるスペースがない。

そこで、森の中でのゆったりとした休息を楽しむために、エントランスから池のほとりにかけて現在の園路を廃止し、より長いルートで傾斜が緩やかな園路を新設する。新設する園路沿いの平坦面の部分に、エントランスから隠れる形で休憩のための空間を新設する。

   

あづまやエリア(利用調査の C,D エリア)

本エリアは、上下二段で池に望む空間構成となっている。上の段は、三四郎池の中でも最も高台に位置し、池の対岸に安田講堂をのぞむことができる。庭園時代には唐笠御亭が置かれていた場所である。現在でもこの休憩場所としての性格を継承して、テーブル、ベンチ、藤棚が設置されたあづまやとなっている。しかし、利用調査の結果、「歩くルートに入っておらず」「歩きにくく」「うっそうとしている」ために、最も利用されていない空間のひとつになっていることが明らかになった。一方で下の段は、利用調査からも、「眺めがよく」「ひっそりとしており」「休憩ができる」ために最も好まれているエリアのひとつとなっていることが明らかになった。

本エリアは上下段とも、昼食や読書などの長時間の休憩に適した場所であると考えられる。しかし、上の段は、高台周辺斜面の植生の繁茂や休憩場所の荒廃のために、人々に近寄りがたい印象を与える結果となってしまっており、せっかくの眺望も活かされていない。下の段は、藤棚の下にベンチが設置されており、休憩によく利用されている。しかしベンチが一組だけであるために、利用の可能性を活かしきれていない。

そこで、休憩場所としての利用を拡大するために、上の段において高台からの眺望を阻害している斜面沿いの植生を下層を中心に伐採する。あわせて、休憩場所のテーブルとベンチを新設する。下の段においては、ベンチの増設を行う。

   

弓道場わきエリア(利用調査の F エリア)

本エリアは、平坦な面の上に散策路が通っている空間である。美しく紅葉する木々や花木が並んでおり、通り抜けるだけでも爽やかな気分を味わうことができる。ケヤキをはじめとして、巨木も多い。利用の面から見ると、医学部から法文 1,2 号館にかけての大きな通りに面しており、周辺の往来が多い。しかし、利用調査の結果ではあまり利用しないという人が多い結果となった。

以上のような特徴から、本エリアは、散策をしながら自然環境の観察ができるエリアとしての利用がふさわしいと考えられる。しかし、現在では隣接する大きな通りから中に入る動線が不明確である。また、巨木周辺の土壌への侵入が容易なため、踏み固めが進んでおり、土壌中の生物も含めて生息環境の悪化が懸念される。

そこで本エリアでは、散策路とその他の植栽空間を明確に分離する整備を行う。散策路部分については、大通りとの連続性を確保するための舗装の統一を行う。植栽部分については、内部への侵入を防ぐために散策路との間に草本あるいは低木の植栽を新設し、植栽を一体的に保全するために縦断する園路を廃止する。加えて、植栽空間の保全を意識してもらうために自然環境に関する掲示板を設置する。