植生および水域の管理計画



はじめに

三四郎池において管理計画を立案する目的は、コンセプトや整備計画で掲げられた三四郎池の将来像を持続していくことである。こうした管理計画に基づいて行われる管理作業は、生物の生息環境の保全と、より快適な利用環境の創出に寄与する。都市部の緑地においては、それが人工的に作られた自然であるために、放置をしておくと、外来生物等の寡占が進んでしまうといったことが起こりうる。そこで生態系の保全のために、リターの適切な処理や、外来種の駆除などの管理活動が必要になってくる。また、植生をその成長するがまま放置しておくと、うっそうとした森となり、利用者が不安感を抱く要因になる。より快適な利用環境の創出のために、適度な伐採・草刈などを行う必要がある。

現在、三四郎池では、風通しが良すぎるために土壌の乾燥化が進んでいる思われる場所や、リター・土壌が流出しやすいと思われる場所がある(弓道場の南側、ケヤキ並木周辺、浜尾像からメイン出入口、メイン出入口から山上会館玄関、山上会館の南のモミジ山、およびいくつかの散策路周辺など)。一方で、視線の高さの視界がもう少し開けていたほうが、景色がよりきれいに見えると考えられる場所や、散策をしやすいと思われる所もある(例えば、池際の散策路など)。

管理計画としては、コンセプトや整備計画に基づきつつ、それを日々の管理作業に適用可能なレベルまで噛み砕き、個別具体的な作業計画にまで落とし込まれることが必要だと考えられる。以下では、具体的な管理活動ごとに、その方針を提示する。ここで提示される管理活動は、植生管理、植物遺体の処理、池の生態系の再生に分かれている。こうした個別管理活動の提案とは別に、「三四郎池ウィーク」における参加型の清掃活動の企画も提示する。方針の提示にあたっては、適宜本企画における各種調査結果を参考にする。

植生管理(樹木の剪定・伐採・植栽・草刈)

○植生管理にあたっては、以下の 4 点を基本事項とする。

・高木層は、今日の落葉樹と常緑樹の混在を中心とした森を維持する。
・散策路沿いなどの利用に供するエリアは、低木層の見通しを確保する。特に、こうしたエリアにおけるシュロおよびトウネズミモチは伐採を基本とする。
・土壌やリターの流出が起こりやすい場所は、立ち入りを制限する植栽によりその空間を保全する。場所ごとの条件に応じて、草本層や低木層の植栽およびその適切な管理を行う。
・島部分は、松やツツジを中心とした、整えられた植栽に復元する。外来生物の侵入を防ぐために、草本層に植栽を行う。この草本層は、島部分であることを考慮し、粗放的な管理でも大きく繁茂しすぎない種が望ましい。
○個別の樹種の取り扱いについては、以下のガイドラインを基本とする。

・大木(アカガシワ・モミジバスズカケノキ・トチノキ・ヒマラヤスギ・アカガシ・ケヤキ・シダレヤナギ・イチョウ・イイギリ・イヌシデ)や都心部では見かけることの少ない珍しい樹木(ヒロハノミミズバイ・シマホルトノキ・アカガシワ・ヒトツバタゴ・イチイガシ)については、周辺の環境に配慮しつつその生育に障害となる条件を極力排除する。
・花木(ベニバナトチノキ・ヒトツバタゴ・トチノキ・サクラ類・ツバキ・サザンカ・ヤマボウシ・キササゲ・ナツツバキ・サルスベリ)や紅葉する樹木(モミジ類・ハゼノキ)は、散策路等の利用エリア周辺についてはその保全を基本とし、季節の景観を楽しむことを目的として周辺の植栽に剪定・伐採を行う。
・増えすぎた低木や木本実生(シュロ・トウネズミモチ・カシ類・アズマネザサ)を、その地点の状況を精査した上で伐採する。


○こうした綿密な管理計画の実施にあたっては、「誰が」作業を行うのかが非常に重要である。したがって、管理作業を実際に行う業者の選択等に当たっては、こうした綿密な管理計画の遂行能力や、現場それぞれの状況に応じた判断能力を持つことをその条件とする。加えて、管理作業の実施時期や項目を逐次検討可能な状態にするために、こうした管理作業に関する情報が、本部担当部局と学内の学識経験者との間で共有されることが望ましい。

植物遺体の処理(落葉落枝処理・池の浚渫)

○植物遺体の処理にあたっては、以下の 3 点を基本事項とする。

・三四郎池周辺から発生するものは、外に持ち出さずに、三四郎池周辺の土壌への還元を基本とする。利用の著しい障害となるものや、日常的な清掃作業での対応が困難な過剰分については、三四郎池周辺に確保する一時保管ヤードにて保管する。
・落葉落枝の清掃・池の浚渫は、散策路上および池の排水口周辺に限定する。
・こうした方針と合わせて、植物遺体の処理作業の遂行に配慮した植生管理・整備を行う。強風の後などに三四郎池を歩くと、大量の枯れ枝が落ちていることが多い。安全管理上、散策路上空や周辺の木々の枯れ枝を探し、あらかじめ取り除くことも必要であると考える。作業は、冬季に行うのが容易であると考えられる。
・逆に、ここ数年、三四郎池で、例えば、取り除く必要がないと思われる場所での落ち葉清掃など、広い意味で過剰な落ち葉清掃が行われてきた。落ち葉と一緒に表土そのものを削り取っていたり、清掃したことにより表土が流出しやすくなったり、そして、その場所の地面の硬化・透水性低下などが起きているように見える場所が存在する。落ち葉清掃についても、こうした事態を起こさないように留意する。

池の生態系の再生

○池の生態系の再生にあたっては、以下の 2 点を基本事項とする。なお、この項目は上記の 2 項目と比較して、より長期的視点から取り組む必要がある。

・現在の外来生物による寡占状態の解決のために、一度池の水を全て排水し、駆除を行う。これは現在の状況に対応するほとんど唯一の方法であるが、その実施にあたっては、特に予算面で障害が大きい。より低コストでの一括駆除方式を検討するとともに、その効果を最大限発揮するために、実施前に駆除後の生態系構築の方針を明確に策定する必要がある。
・生態系の構築にあたっては、外来生物の導入以前の在来魚類を中心とした生物相を目標とする。

「三四郎池ウィーク」における清掃活動

○年一回、三四郎池に関するイベント「三四郎池ウィーク」を開催し、その期間中に、一般の人々による一日清掃活動を行う。

・想定する活動への参加者は、東京大学関係者(学生・職員・教員、およびその親族・友人)と地域住民とする。
・参加人数は、数十名~ 100 名程度を目標とする。
・清掃活動の具体的項目としては、落葉清掃、草刈、排水口付近の浚渫、柵等の修繕を行う。
○イベント期間中には三四郎池の自然環境・歴史等に関するパネル展示や、インストラクターによる三四郎池ツアーを開催する。

・イベントは、清掃活動を行うことに加え、三四郎池や自然環境について知り、体験する機会とし、人々の三四郎池への関心・理解を高める。
・こうした関心・理解の高まりが、三四郎池を良好な環境に維持していく上で非常に重要になるであろう。三四郎池ウィークは、後に解説する情報共有システムの構築とともに、広く人々に三四郎池に関心を持ってもらうための重要な機会となりうる。