学内における三四郎池の利用状況と整備の希望に関するアンケート調査



背景と目的

三四郎池の利用に関する調査(以下、利用調査)の目的は、三四郎池の整備・管理案の作成に向けた基礎資料として、三四郎池の利用状況および整備の希望をとりまとめることにある。利用調査の結果は、利用者にとってより快適な三四郎池にしていくにはどのような整備・管理が必要かを示すものとなる。SiLRにおいては、今後の三四郎池の整備・管理の方向性を検討していく一つの視点を提供する調査と位置づけられる。

調査方法

三四郎池の利用状況および三四郎池の利用に関するニーズを幅広く把握するため、アンケート調査を採用した。調査対象は、三四郎池の主な利用者として想定される本学の本郷キャンパスを拠点として活動する学生・教職員とした。

利用調査の実施にあたっては、学生・教職員19人に対する三四郎池の利用に関するインタビュー調査(2008年5月に実施)を通してアンケートの質問項目の作成・検討を行い、学生・教職員83人に対するアンケート予備調査(2008年6月に実施)を行ってアンケート票の有効性の検討を行った。多くの人から回答を得られるよう、回答方式は選択式を基本として容易に回答できるようにした。

アンケート本調査(2008年8月~11月に実施)の概要は次の通りである。学生に対しては調査員がアンケート票の配布・回収を行い、有効回答291部(本郷キャンパスの学生総数約18,500人)を得た。教職員に対しては郵送にて配布・回収を行い、有効回答415部(本郷キャンパスの教職員総数約3,500人)を得た。それぞれ信頼率95%で6%以下の精度があった。(学生と教職員でアンケート票の配布・回収方法が異なる。これは全学規模で調査を行う際の制約条件の中、学生・教職員それぞれで、より多くの人の協力を得られると考えられる方法を採用したことによる。)

回答者(全体で706人)の属性を次に示す。回答者は全体で男性70%、女性30%であった。年齢は図1のように20-25歳を中心に幅広い年代に分布していた。また、回答者は学生41%(大学院生28%、学部生13%)、教職員59%(教員22%、職員37%)であった。今回の調査では調査方法の違いもあり、学生よりも教職員の方々から多くの回答を得ることができ、教職員(特に職員)の回答比率が高くなった。学生、教員、職員の回答者の内訳は図2~4の通りである。

   
   図1 回答者の年齢分布

   
   図2 学生の所属の内訳

   
   図3 教員の所属の内訳

   
   図4 職員の所属の内訳

所属学部などに偏りはあるものの、幅広い属性の方々から調査協力を得た。在籍人数のわりに工学系の学生のサンプルが少ないなどの属性の偏り方から、結果の一部にも偏りがある可能性があることを断っておく。

なお、三四郎池の利用状況およびニーズをより深く把握していくために、本調査以外にも現地における利用者の行動調査や学生・教職員以外の地域住民・観光客などを対象とした調査を行うことが望まれる。

調査結果・考察

1)これまでに三四郎池に行った回数

三四郎池に3回以上行ったことがあると回答した割合は75%を超えており、多くの方が三四郎池を利用しているといえる。21回以上行ったことがあると回答した割合も25%を超えており、リピーターとして三四郎池に通っている方も多いことも伺える。なお、今回の調査では大学で長く生活している教職員の回答比率が高いために、三四郎池に行った回数が多いと回答した割合が高いことに影響していることを断っておく。例えば、学生では三四郎池行った回数は1~5回と回答している割合が高かった。

   
   図5 これまでに三四郎池に行った回数

2)三四郎池に行く頻度

図6からもわかるように、三四郎池に行く頻度は年1、2回と回答する割合が圧倒的に高く、三四郎池に通う頻度は高くないといえる。

   
   図6 三四郎池に行く頻度

3)三四郎池の利用内容

三四郎池を散歩で利用するという人の割合は75%を超えており、三四郎池は主に散歩空間として利用されているといえる。この次はキャンパス内の移動の際の通り抜けで利用するという人で、その割合は52%であった。休憩で利用するという人の割合は40%であった。研究やサークル活動といった利用の割合は小さかった。その他の利用(自由回答)として学外者に東大を案内する際に三四郎池に行くという回答が見られた。

   表1 三四郎池の利用内容
   

4)三四郎池のイメージ(自由回答)

本質問に対しては448人から回答があった(表1)。その主要なものとして、三四郎池は落ち着ける空間であり、オアシスのような空間であるというものがあった。また、東大のシンボル、小説「三四郎」、歴史的な場所などの回答も見られ、大学の中でも三四郎池が特別なイメージを有しているといえる。反対に、三四郎池は暗くてうっそうとしているという負のイメージも強いことがわかった。

   表2 三四郎池の主なイメージ
   

1)~4)より、ときどき散歩をして心をいやす東大の特別な空間であるという三四郎池の姿が伺える。

5)三四郎池で気に入っている場所とその理由

この質問では、三四郎池で最も気に入っている場所を図7のA~Iのエリアから1つ選択してもらった。この結果、気に入っている場所としてC、Aエリアを挙げる割合が多かった。それらの場所を気に入っている理由の1番としては「眺めが良いから」、2番としては「ひっそりとして静かだから」というものが挙げられた。Cエリアを気に入っている3番目の理由は「休憩できるから」であり、Aエリアでは「三四郎池付近の施設を利用したついでに行けるから」であった。3番目の理由にエリアの特徴が出ていると考えられる。総じて眺めが良くひっそりとしている場所に対して好感度が高かった。

   
   図7 三四郎池のエリア分け

   
   図8 三四郎池で最も気に入っている場所

6)三四郎池で利用しない場所とその理由

5)と同様に三四郎池で最も利用しない場所を選択してもらった。この結果、GエリアやDエリアといった池の南西側があまり利用されていないことがわかった。利用しない理由としては、1番に「そもそも自分が歩くルートに入っていない場所だから」、2番に「歩きにくい場所だから」、3番に「うっそうとした雰囲気だから」というものが挙げられた(G、Dエリアに限らず全体の傾向も同じであった)。そもそも歩くルートになっていないという原因としては、利用者の普段利用する施設(生協や研究室など)がどこにあるかということも挙げられるだろう。しかしそれ以上に、道の歩きにくさや樹木がうっそうとしていることが三四郎池の回遊性を低め、そもそも利用されないという結果になっているものと推測される。

   
   図9 三四郎池で最も利用しない場所

5)、6)より、三四郎池は眺めが良くて静かに落ち着けるという長所を持つ反面、うっそうとした雰囲気で歩きにくいという短所を持つことが伺える。

7)三四郎池で変わってほしくないモノ・コト

本質問では、三四郎池で変わってほしくないモノ・コトを選択肢から上位3つまで選択してもらった。この結果、「ひっそりとして静かな雰囲気」「休憩できる場所」「回遊できる園路」などが上位に挙げられた。現状のひっそりとして静かな雰囲気は利用者に好まれており、この雰囲気を維持していくことが望ましい。

   
   図10 三四郎池で変わってほしくないモノ・コト

8)三四郎池に対して行ってほしい整備

この質問は7)と同様に質問を行った。この結果、三四郎池に必要な整備として、「水質などの池の水の管理を行う」「より歩きやすいようにする」「より休憩しやすいようにする」などが多く選ばれた。池の水質の改善は三四郎池のイメージアップにつながると考えられる。また、歩道の修繕や落ち葉の清掃などにより歩道を歩きやすくしたり、ベンチを増やしたりすることで三四郎池の利用を促進できると考えられる。

   
   図11 三四郎池に対して行ってほしい整備

9)三四郎池に関する要望(自由回答)

本質問に対しては357人から回答があった(表3)。表3より、現状の自然を維持することが要望として強いことがわかる。7)でみられたひっそりとして静かな雰囲気が好まれているといえる。また、ここでも水質の改善に対する要望が見られた。

   表3 三四郎池に関する主な要望
   

7)~9)より、現状のひっそりとした雰囲気の中で休憩できることを基本として池の水や歩道の管理を充実させていくことが求められているといえる。

まとめ

上記のように本調査において利用に関する様々なことが明らかになった。中でも、三四郎池の整備・管理案の参考となる主な知見として以下の点がいえる。

・三四郎池は東大のシンボルともいえる特別なイメージを有しており、今後ともその良好なイメージを維持するように整備・管理していくのが望ましい。

・三四郎池の静かで落ち着きのある雰囲気が求められており、そのような雰囲気をもたらしている三四郎池のみどり豊かな現状を基本として今後の整備・管理案を作成していくのが望ましい。

・一方で眺望や歩行のしやすさの向上等を求める意見も聞かれ、池の水質の管理や樹木の剪定、歩道の修繕等の日常の維持管理を行うことでより快適な三四郎池にしていくことができると考えられる。

謝辞

利用調査においては、お忙しい中、多くの学生・教職員の方々にアンケートの協力をいただいた。また、アンケートの実施に当たっては東京大学学生支援グループのみなさまのご支援をいただいた。皆様のご尽力に御礼申し上げる。